所得税の青色申告とは?(その4)

少額減価償却資産の特例

青色申告をする個人事業主であれば、少額減価償却資産の特例を活用できます。

1個(または1組)当たり30万円未満の減価償却資産を取得した場合、取得価額全額をその年の経費に計上できます。

「少額減価償却資産の特例」の対象となるのは、新品・中古にかかわらず、その取得が30万円未満の減価償却資産です。

30万円未満の判定は、税込みで会計処理している課税事業者は税込みの取得価額で、税抜きで会計処理している事業者は税抜きの取得価額で判定します。

免税事業者の場合には、税込みで30万円未満かどうかで判定します。

上限が、年間300万円まで

少額減価償却資産の特例は、事業年度中に購入した少額減価償却資産の取得価額をすべて合わせて300万円までが対象です。

仮に、事業年度が1年に満たない場合

300万円を12で割り、その事業年度の月数を掛けた金額が上限となります。

取得価額が20万円未満の場合

1個(または1組)が10万円未満の場合は、減価償却の対象ではなく全額経費にできます。

1個(または1組)が10万円以上20万円未満の場合は、「少額減価償却資産」の選択の他に、3年で均等償却できる「一括償却資産」を選択することもできます。

一括償却資産   ⇒ 償却資産税の申告対象外

少額減価償却資産 ⇒ 償却資産税の申告対象

償却資産とは?

償却資産とは、土地・家屋以外の事業用資産で、

事業者の所得の金額の計算上、減価償却費として損金または必要経費に算入されるものをいいます。

取得価額が10万円以上の減価償却資産については、償却資産税の申告に対象の資産となりますが、「一括償却資産」として会計処理した資産については、

償却資産税の対象資産に含めなくて良いこととされています。

1個(または1組)が10万円以上20万円未満の場合

一括償却資産にするか? 少額減価償却資産にするか?

は、各々のメリット・デメリットを踏まえて検討しましょう。

所得税の青色申告とは?(その3)

青色事業専従者給与について

事業主が青色申告者の場合、青色事業専従者給与として、給与相当額を必要経費に算入することができます。

※事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に届出が必要です。

「青色事業専従者給与」とは、個人事業主と生計を一にする親族がその事業に従事している場合で、その親族が「青色事業専従者」とみなされた場合に支払う給与のことである。

(提出時期)

青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内)に、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出が必要です。

青色事業専従者の要件

①個人事業主が青色申告者であること

②青色申告者と「生計を一」にする配偶者その他の親族であること

③その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること

④その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

※必要経費となる青色事業専従者給与額は、支給した給与の金額が次の状況等からみて相当とみとめられるもので、しかも、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額の範囲内のものに限られます。

①専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその程度

②あなたの事業に専従するほかの使用人の給与及び同種同規模の事業に専従する者の給与の状況

③事業の種類・規模及び収益の状況

 

次回は、「所得税の青色申告とは?(その4)」

「少額減価償却資産の特例」をご覧ください。

所得税の青色申告とは?(その2)

青色申告者には、所得金額から
10万円または65万円(55万円)控除を受けることができる青色申告特別控除があります

【55万円の青色申告特別控除の要件】

①不動産所得(事業的規模)または事業所得がある

※不動産所得の場合、家屋の賃貸の場合はおおむね5棟以上、アパートなどの賃貸の場合はおおむね10室以上の場合は、事業的規模を満たしていると考えることが多いです。(5棟10室基準)

②複式簿記で記帳する。

③現金主義ではなく発生主義で記帳する。

④貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付。

【65万円の青色申告特別控除の要件】

①上記の「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること。

e-Taxによる申告または電子帳簿保存を行っている。

※令和4月1月1日から、帳簿書類を電子データのままで保存する場合に必要な税務署長の事前承認が不要となりました。

【10万円の青色申告特別控除の要件】

上記の「55万円の青色申告特別控除」及び「65万円の青色申告特別控除」の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

 

次回は、「所得税の青色申告とは?(その3)」

「青色事業専従者給与」をご覧ください。

所得税の青色申告とは?(その1)

個人の確定申告には「青色申告」と「白色申告」という2種類があります。

青色申告は白色申告に比べて多少手間がかかりますが、青色申告特別控除などのメリットがあります。

白色申告

手続きが青色申告より容易ですが、青色申告に認められる特典がないです。また、2014年の法改正により白色申告も帳簿の記帳が義務化されました。帳簿方法は、単式簿記(簡易簿記)が認められています。

青色申告

青色申告を利用するためには「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。

【1月16日以降に新規開業した場合】

業務を開始して2か月以内に申請書を提出すると青色申告が利用できるようになります(開業が1月1日~1月15日の場合は3月15日が提出期限)。

【すでに事業を開始していた場合】

「今年から白色申告から青色申告に切り替えたい」という場合は、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

※期限日が土日祝日の場合は、これらの日の翌日が期限日となります。

【青色申告の特典】

①青色申告特別控除

②青色事業専従者給与

③貸倒引当金

④純損失の繰越しと繰戻し

⑤少額減価償却資産の特例

 

次回は「所得税の青色申告とは?(その2)」

「青色申告特別控除」をご覧ください。

減価償却は、定額法?定率法?どちらがいい?!

減価償却とは?

事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、構築物、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には購入後時とともにその価値が減少していきます。このような資産を減価償却資産といいます。減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費にします。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が各資産ごとに定められています。

減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を法定耐用年数で年分の必要経費として分配していく手続きです。

償却方法は?

①定額法 償却できる金額が毎年一定                

     計算式:取得価格×定額法の償却率

②定率法 償却できる金額が最初の年が多く、毎年逓減します

     計算式:未償却残高×定率法の償却率

 

※建物及び建物附属設備、構築物は、定額法

※機械装置、器具備品、車両運搬具は、定額法・定率法のどちらか選択できる

定額法・定率法のメリット

定額法:毎年同じ減価償却なので、計算がわかりやすく、事業計画がたてやすい

定率法:定額法よりも初期の段階で減価償却が大きいため、早く経費化できる

あなたは、どちらを選択しますか?

※原則

    個人の場合は、定額法  法人の場合は、定率法

    ⇒償却方法を変更する場合は

    減価償却資産の償却方法の届出書を提出する

10万円以上30万円未満の固定資産を少額減価償却資産で、一括で経費にするときの消費税は、税込み?税抜き?どっちなの?

「少額減価償却資産の特例」・・・中小企業者等が取得した資産の価額が、10万円以上30万円未満である減価償却資産は、青色申告書を提出する資本金又は出資金の額が1億円以下の法人等又は個人事業主で一定の要件を満たしたときに、その取得価額を一括で経費にすることができる制度です。

30万円未満」の判断基準

①免税事業者

②課税事業者で税込経理を行っている事業者

①②の事業者は、税込金額で30万円未満かどうかで、判断します。

③課税事業者で税抜経理を行っている事業者

③の事業者は、税抜金額で30万円未満かどうかで、判断します。

 

 

※ただし、1年間で経費処理できる少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が12ヶ月未満の場合には月数按分が必要)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度額となります。

※減価償却費の計上は、個人の場合は、強制的に償却しなければなりません。しかし、法人の場合は会社の判断により償却限度額範囲内であれば任意で償却できる取扱いになっています。

マイカーで通勤しています。通勤手当の非課税なのはいくらまで?

従業員が給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで所得税が非課税になります。

マイカーで通勤する人の1ヶ月当たりの通勤手当の非課税は、

片道の通勤距離に応じて定められています。

片道の通勤距離     1ヶ月当たりの限度額
  2km未満             全額課税
  2km以上~10km未満                4,200円
10km以上~15km未満                7,100円
15km以上~25km未満                 12,900円
25km以上~35km未満                 18,700円
35km以上~45km未満                 24,400円
45km以上~55km未満                 28,000円
55km以上                 31,600円

(参考:国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当)

※ただし、非課税となるのは所得税だけです。社会保険料や雇用保険料については、通勤手当も保険料の対象給与に該当します。     

※電車やバスなどの交通機関を利用されている方は、別途一定の所得税の非課税の限度額があります。

iDeCoってした方が良い?

確定申告の時期にちょくちょく質問を受けます。

まず、その先生が個人事業なのか?医療法人の役員なのか?
月額掛け金の限度額が変わってきます。

掛けるときは、掛け金が全額所得控除で、税金がお安くなります。

ただし、iDeCoは1人1口座で、自分で金融機関等を選択し、運用等も選択しますが、その選択した金融機関や商品によって、手数料が変わってきます。
・ 口座設定(加入)時手数料
・ 運用期間中の口座管理手数料信託報酬
そして、金融機関を変えたいときの
・ 移管時手数料

iDeCoは給付を受ける際にも、
・ 給付手数料
がかかります。

受け取る方法は、一時金か、年金か、または併用かを選べますが、これらはすべて税金の計算の対象です。
つまり税金がかかります。

その時の、その先生の収入(所得)の具合、小規模企業共済に入っているかとか、退職金積み立ての保険のピークがいつかとか、理事長を退任した後どうするのかとか、年金はどのようなものをいつからもらえるのか。。など。
勘案しながら、iDeCoをしたら、どのくらい得をするのか?
をお答えさせて頂いております。

毎回、悩ましいなと思いながら。。概ねを。。(-_-;)

新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金の係る入金は収入ですか?

この慰労金は、医療従事者ご本人に対するものですが、原則として医療機関が医療従事者や職員から委託を受け申請をとりまとめて、代理申請を行い慰労金が医療機関に入金します。そのため入金した金額は、一旦医療機関が預かって医療従事者へ支給します。

慰労金は、所得税法の非課税所得ですので、源泉徴収も必要ありません。給与や賞与とは別に支給する方がよいと思います。

医療機関はあくまでも代理で申請及び受領するので、金時は収入ではありません。また、支給する時も経費ではありません。

会計処理としては、入金時も支給時も預り金で処理するとよいでしょう。

 

リースした方が良いですか?買った方が良いですか?

開業時にも、開業後クリニックオープンして経営が軌道に乗った時期にも、よく質問を受けます。

開業時は購入

開業時に借入をされることがほどんどのケースかと思われます。
借入金の利息より、リースの利息の方が高い!
借入れる際の計画にリース料を入れた場合は、「運転資金」として銀行に見られます。

購入時は、迷いなく購入で!
ただし、必要のないものは買わないように!
開業時の借入金は少ないに越したことはありません。

 

資金に余裕があれば購入

利息は勿体ないので、可能であれば、一括で購入。
あとは、リースの利息+手数料と、分割の場合の費用を比較して検討。

ただ、リースとは、最終的に所有権がどうなるか?リース期間中の保守がどうなるかも関係してきますので、一概には言えません。

リースの場合のメリットは、
☆ 初期費用が少ない
☆ 毎月の必要な資金がわかる
☆ 毎月の経費が均等
+ 医療機器等の場合、償却資産税(地方税)が不要
+ 車両の場合、自動車税・車検が不要
です。

購入の場合のメリットは、
☆ 自分のものになる
☆ 取得とは関係のない事務手数料や利息が不要
  = 長期保有はリースより割安
☆ 好きな時に売却(買換)できる
☆ 減価償却により経費にできる
 (償却方法によるが、早く経費にすることも可能)